急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔に炎症が広がることによって起こる病気です。次の2つに大きく分けられます。
「かぜ」から起こりやすい急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎は、かぜによる急性の鼻炎が引き金になって起こることが多く、ウイルスや細菌が主な原因となります。片側のみに起こることが多く、症状は程度の差はありますが、慢性副鼻腔炎とほとんど同じです。
鼻の構造や体質が関係する慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎の発症には、副鼻腔の炎症が治りにくい鼻の構造(鼻中隔が曲がっている)や体質、栄養状態の低下などが関係しています。このような要因のある人が急性副鼻腔炎にかかると、治療が上手くいかず、症状が次第に悪化し、慢性副鼻腔炎になることがあります。ウイルスや細菌のほか、アレルギーや虫歯が原因になっていることもあります。
副鼻腔炎の構造
慢性副鼻腔炎の治療
慢性副鼻腔炎の治療法は、主に「薬物療法」と「局所療法」、そして「手術療法」に分けられます。最近は優れた薬剤が登場し、手術することが少なくなりました。また、手術も身体への負担が少ない内視鏡手術が行われるようになっています。
薬物療法
症状にあわせて次のような薬を使います。
・抗菌薬:病原細菌の増殖を抑える
・消炎酵素薬:炎症を抑える
・粘液溶解薬:分泌物を排泄しやすくする
最近では、マクロライド系抗菌薬が細菌の増殖を抑えるだけでなく、炎症や鼻みずの改善効果があることがわかり、慢性副鼻腔炎の治療に広く用いられています。
いずれの薬も数週間〜2、3ヶ月の服用が必要となります。医師の指示を守り、根気よく治療することが大切です。
局所療法
まず、鼻腔や副鼻腔にたまった分泌物を吸い出し、洗浄します。鼻の通りがよくなったら、ネプライザーという装置で、必要に応じて抗菌薬やステロイド薬、粘液溶解薬を服鼻腔の直接送り込んで治療します。
内視鏡手術
内視鏡を利用して、副鼻腔と鼻腔の通路を広げて、空気や分泌物の出入りをよくすることを目的に行う手術です。 薬物療法や局所療法で効果のない場合や、重症の患者さんに行います。手術後は、薬物療法を継続して、再発を防止します。鼻茸だけを取り除く手術を行うこともあります。
慢性副鼻腔炎の治療プラン
★アレルギー性鼻炎やアレルギー性体質・ぜんそくを合併している場合
*通常の薬物療法だけでは効果があまり期待できませんので、抗アレルギー薬やぜんそくの治療を加えます。
*特にぜんそくを合併している場合は、治りにくく、手術をしても再発を繰り返すことがあります。再発を防ぐために、術後に症状に応じてステロイドの点鼻薬や経口薬を投与します。
慢性副鼻腔炎を繰り返さないために
慢性副鼻腔炎は、徹底的に治しましょう。
慢性副鼻腔炎は、根気よく。徹底的に治療することが何よりも大切です。慢性副鼻腔炎はかぜが引き金となって発症したり、悪化したりしますから、かぜをひかないように注意し、かぜをひいたら早めにきちんと治してください。
順天堂大学耳鼻咽喉科・頭頸科教授 池田勝久 監修 「しっかり治そう慢性副鼻腔炎」 (アボット ジャパン 発行) より